報道ステーションにて、北京五輪・野球アジア予選に出場予定の日本代表チームと社会人野球・近畿選抜チームとの練習試合の模様が放送された。
アジア予選は、決勝リーグが12月1日から3日まで台湾で開催される事となっている。 今日(11月6日)はようやく本格的に始動した代表チーム(通称・星野ジャパン)が、実践経験を積む為に、兵庫県神戸市のスカイマークスタジアムで社会人野球の近畿選抜チームと練習試合を行った。4番の新井貴浩選手(広島)が3安打2打点。先発の涌井秀章投手(西武)が4回無失点、藤川球児投手(阪神)も3者連続三振と順調な仕上がりで、試合は9-0となり、幸先よいスタートといえる。 まあ、練習試合はいいとして、僕自身としては相手の社会人選抜チームの事が気になった。 僕は古いタイプの人間なので、アマチュアの祭典であるオリンピックで、プロ野球選手ばかりで固めたチームがメダルを掛けて戦う…どうしても違和感を感じずにはいられなかった。 相手の社会人野球の選手達はどんな気持ちで戦っていたのだろう。本来なら自分達の桧舞台であるはずの五輪の試合に、自分達が出られず、プロの人達が出場する現実に、どこかやりきれない気持ちがあったのではないか。 もちろんプロが出なければ、五輪の本戦はおろか予選ですら勝つのが難しい、というのは分かっている。でもアマチュア選手が最終的に目指すのは、本来はオリンピックの舞台だったのではなかったか。 Number611(2004年9月30日)にアマチュア野球に関する特集記事があった。 この記事には、住友金属の選手・監督として活躍し、ソウル五輪代表監督も務めた、日体大野球部の筒井大助監督が登場していた。 筒井監督は、現在の社会人野球の状況を詳しく話した。次々と廃部していく社会人野球チームの事も気がかりだけれど、何よりも問題になっているのが社内における野球部員の立場。 一昔前は社員として社業と野球の両方を担っていた部員が、現在では「野球のみ」の契約社員として雇用され、部員と一般社員との距離が離れていく現状、「当然、同僚たちの応援など、あるわけもない」と語る。 そしてプロとアマの関係については、こう話した、(以下、原文のまま抜粋。著者は矢崎良一氏) 「五輪代表チームにしても、プロに"来てもらう""戦ってもらう"という形。イベントもプロにお金を払って"来てもらう"そんなの間違ってるんです。だって、プロがアマの恩恵を一番受けているのだから。もっとプロが能動的に、アマに何かを"する"のが筋。だってアマが育たなければプロも傾くんですよ。アマという畑が荒れれば、その畑で育つ果実であるプロがどうなるか……。それがわかっているプロの人が何人いるんですかね?」 来年の北京五輪を最後に、オリンピックでの野球競技は消滅する。その、最後の舞台にアマチュア選手が立てない現状に、僕自身、どうしてもやりきれない気持ちがある。 かつて「ミスターアマチュア野球」と称えられた杉浦正則投手が活躍したバルセロナ五輪、松中信彦(現ソフトバンク)・福留孝介(現中日)らが活躍したアトランタ五輪はもう遠い昔になった。IBAFワールドカップ(WBCではなくて、戦前から続く野球の世界大会)ですら、プロに「来てもらう」現状もあるし… 星野仙一監督ばかりがクローズアップされているけれど、最後の五輪での野球競技が、このようにさらりと流れていく。その中で、今日の練習試合で、はつらつと活躍するプロ選手の影で、うなだれる社会人選抜の選手達の姿に、大きな寂しさを感じた。
by wataridori21
| 2007-11-07 00:41
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